18.塩害とASRの複合劣化

【塩害とASRの複合劣化】

各劣化が互いの劣化進行を早める.⇒いずれの劣化においてもひび割れの発生に伴う保護機能の低下に集約される.

①塩化物イオンやアルカリについて

・凍結防止剤の影響を受けた構造物で、塩化物イオン浸透分布などを確認した場合、表面から2、3㎝程度のところに塩化物イオン濃度のピークが存在することがある.

⇒凍結防止剤散布期以外は、雨水のみの漏水となるため、表面の塩化物イオンが外部へ流出する洗い出し作用を受けるためと報告されている.

・凍結防止剤など外部から供給されるアルカリによりASR劣化が生じる事例も報告されているが、部材厚がある程度大きい場合は、内部の状態が即座に変化するわけではない。

⇒表面近傍はアルカリ濃度が高くても内部は高くないため.

②水・温度について

・降水により水分が供給されたり、日射により熱が供給されると劣化(腐食速度やASRの膨張進行速度)が促進される。

・ASRによる膨張には水が不可欠.しかし、外部からの供給がなくても細孔溶液中に水分が存在するため、内部水分によって膨張する可能性がある.

・ASRの膨張は相対湿度80%以下では生じないとの報告もある.

③複合劣化の助長

・塩害が先行した場合よりもASRが先行した場合の方がより変状を加速させる可能性が高くなる.⇒塩害による劣化がASRに与える影響はかぶり近傍から内部へと進行するため時間を要する.

【対策】

1)水分逸散と外部からの塩分の浸透抑制の両方の効果があるシラン系表面含浸工法による対策

2)鉄筋腐食、ASRの両者への抑制効果が期待される亜硝酸リチウム系材料による対策

3)多量の塩化物が浸透している場合は、腐食抑制のために電気防食あるいは脱塩工法などによる対策.ただし、電流印加に伴うアルカリの集積などによってASRが促進されないことを確認することが重要.

※引用:コンクリート工学2019.10月(Vol57.10)

表 主な環境作用と塩害・ASR劣化との関係
環境作用影響因子コンクリート」への影響劣化への影響
塩害ASR
凍結防止NaCICI⁻の供給発生を助長
Na,Kの供給 OH⁻濃度の上昇発生・膨張を補足
水の供給発生・膨張を補足発生・膨張を補足
気象作用降水・雨掛り水の供給発生・膨張を補足発生・膨張を補足
気温・日射温度の上昇発生・膨張を補足発生・膨張を補足
海象作用飛来塩分CI⁻の供給発生を助長
Na,Kの供給 OH⁻濃度の上昇発生・膨張を補足
水の補給発生・膨張を補足発生・膨張を補足
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