19.塩害と中性化の複合劣化

【塩害と中性化の複合劣化】  ※引用コンクリート工学2019.11月(Vol57.11)

塩害と中性化が複合すると、塩化物イオンを固定する水和物が炭酸化し、固定されていた塩化物イオンが細孔溶液中に解離することによって、未中性化部に塩化物イオンの濃縮が生じる。

◆塩害と中性化の複合劣化メカニズム

①モノサルフェートが塩化物イオンと反応し,フリーデル氏塩となる.

②フリーデル氏塩が炭酸化する.

③フリーデル氏塩中に固定されていた塩化物イオンが細孔溶液中に溶解する.

④細孔溶液中の塩化物イオン濃度が上昇し,濃縮と拡散を繰り返し内部へと浸透していく.

複合劣化の進行メカニズムの概念図を下図に示す.

◆複合劣化に影響を及ぼす各種要因

(1)材料・配合

・高W/Cのコンクリートは,中性化も塩害の進行も早い⇒複合劣化の進行も当然早くなる.

・高炉スラグ微粉末,フライアッシュ,シリカフュームなどの混和材を用いた場合,塩化物イオン抵抗性は向上する.⇔反対に中性化に対する抵抗性は低下.

(混和材の水和で水酸化カルシウムが消費されるため)

・近年では環境負荷の低減のため,混合セメントC種を超える量の混和材が用いられるため,混和材の影響で塩分浸透抵抗性が大きいにも関わらず,中性化速度も大きいため,通常では中性化が問題とならないような環境でも塩化物イオンの濃縮が生じることが確かめられている.

(2)環境

・塩化物イオンの侵入は湿潤状態で生じ,中性化は相対湿度が50~60%程度の場合に進行が速くなる.両者が同時に進行する可能性はそれ程高くない.

◆鋼材腐食について

〇腐食開始時期

・内在塩分と中性化の複合劣化

中性化により濃縮現象を生じた場合,当初混入した濃度の約2.5倍になったことが実験的に確認されている.

中性化:一般に中性化残り10㎜とされている.

    塩化物イオンが混入している場合,中性化残り20㎜とされている.

    JSCE「塩化物イオンの影響が無視できない環境」中性化残り最大25㎜

塩害:鋼材位置の塩化物イオン濃度が1.2~2.5kg/m3程度となった時点.

・外来塩分と中性化の複合劣化

 必ずしも塩化物イオンの浸透がそれ程,中性化の影響を受けない場合がある.   

中性化残りは10~25㎜の範囲で設定.(内在塩分の中性化残り25㎜だと大きく規定しすぎる)

〇腐食速度

・内在塩化物イオンが存在する場合は,中性化の進行によって腐食速度が大きく増加する.

・一方,塩分浸透と中性化が同時に進行する場合は,いろんな兼ね合いで一概には言えない.

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